「お客様は神様」か?

近年、顧客によるハラスメント行為である
「カスタマーハラスメント」(いわゆる「カスハラ」)
がニュース等で取り上げられることがあります。
最近では、「ペイシェントハラスメント」(「ペイハラ」)
(病院などでの患者(ペイシェント)によるハラスメント行為)などという呼び方もあるようです。

ご意見か、ハラスメントか?

不十分な商品、サービスに対する適正な限度での苦情・ご意見、使用方法等に関する問い合わせであれば、お店などの商品・サービスを提供する側にとっても有用なものです。

しかし、最近は、度を超した要求、執拗な要求、単に顧客のストレス発散のためとしか思えない苦情などが目立ってきています。

お店としても、相手がお客様であるとの意識から、言いなりになる、非常識な内容の要求であっても応じるなどの対応を取ってしまいがちです。
しかし、これでは、お店とお客様との関係性がいびつなものになってしまいます。

「お客様は神様です」というフレーズの経緯

多くの方は、「お客様は神様です」というフレーズを耳にされたことがあるでしょう。
このフレーズが原因とは言いませんが、日本では、お客様はお店(店員)より上の存在であり、
「お店はお客様に従うもの」
「お客様の要望は聞かなければならない」
という意識が強くあるように感じます。

このフレーズの元祖は、昭和の大歌手である三波春夫さんであると言われています。
三波春夫さんのオフィシャルサイトには、その発言の経緯が書かれています。
(三波春夫オフィシャルサイト:https://www.minamiharuo.jp/profile/index2.html)

最初は、学校の体育館での公演?での司会者とのトークだったそうです。
「三波さんは、お客様をどう思いますか?」
「うーむ、お客様は神様だと思いますね」
とのやり取りがお客様にとても受けたようです。
そして、他の公演でも主催者などから同じやり取りを求められたため、同様のトークを続けられたとのことです。

それを漫才トリオのレツゴー三匹さんが
「三波春夫でございます。お客様は神様です」
という表現で流行させて、「お客様は神様です」という言い方が世の中に定着したとのことです。

上記サイトでは、三波春夫さんの意図として、
「お客様は神だから徹底的に大事にして媚びなさい。何をされようが我慢して尽くしなさい
などと発想、発言をしたことはまったくありません。」
と書かれています。
「お客様は神様です」という言葉だけが一人歩きして、三波春夫さんも本意ではなかったのでしょう。

お店とお客様との法的関係

お店(サービス提供者)とお客様との関係を法的な観点から見てみましょう。

お店は、お客様からお金を支払ってもらいますが、何の見返りもなくお金をもらっているわけではありません。
商品は売るのであれば、商品の代金として、サービスを提供するのであればサービスの料金としてお金を支払ってもらいます。
お店とお客様は、売買契約とその履行(商品の提供とそれに対する代金の支払い)をしているのです。

売買契約は、「ある財産権」(この場合は商品の所有権)を相手方に移転して、相手方にその代金を支払ってもらう契約です。
この場合、財産権の移転と代金は等価値となっています。
(当事者がそれぞれを等価値だと考えているからこそ、売買契約が成立するのです。)
そうでなければ、法的には贈与契約(無償で財産権を相手方へ与える契約)となってしまいます。

このように、お店とお客様との金銭の授受は、対等な立場の者が、等価値なもの(財産権と金銭)を交換しているだけであり、どちらが偉いということはありません。

ましてや、役所などの公共サービスでは、来所者は、無償でサービスを提供してもらうのですから、来所者が偉いということはあり得ません。
よく、「税金を支払っている」などと言う来所者がいますが、その来所者が窓口のひとを雇って給与を支払っているわけでも何でもないのですから、まさに言いがかりでしかありません。

まとめ

このように、「お客様は神様」などではなく、契約における対等の当事者に過ぎません。
・「お店はお客様に従うもの」
・「お客様の要望は聞かなければならない」
という前提で対処するのではなく、
契約における対等な当事者として、
・適切な要望には応える
・限度を超える要求は拒否する
という対応をすべき、
というのが本記事のまとめです。

そうでないと、天国の三波春夫さんも、本意でないと心を痛められるのではないでしょうか。

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